あさって日記

ぷぷぷ、ぶつぶつ、げらげらをあつめたつぶやき日記。2日後更新。

白バラの祈り

昨日、たまたま偶然に生協で白バラの祈り-ゾフィー・ショル、最後の日々-の上映会があることを発見し、即買いし、昼の部に行ってきました。
昨年の粉雪が降る季節(レミオロメンの『粉雪』も流行っていた季節)に、ラジオで紹介されていたこの映画、一言で言うと、「ヒトラー政権に立ち向かった”白バラ”と呼ばれたグループの紅一点の女学生の5日間の物語」でした。

エンターティンメントというよりは、歴史的真実の重さを知るところが狙いなので、「感動」というよりも「宿題」を持ち帰るタイプの映画でした。

「あの時、引き返してビラをまかなければよかったのに」とか「欄干からばらまかなければよかったのに」とか、「地味に長く活動した方がよかったのではないか」とか、「いやいや、地味に長くやっていたのでは、犬死する人が増えるだけだから、思想を伝え、広めるためにはやるしかなかったのだろう」とか彼女の運命の分岐点を考えてしまいました。でも、結局は、2月18日に捕まらなかったとしても、終戦までには見つかって同じ運命だっただろうな・・・。
で、多分、彼女も5日で処刑されるとは思っていなかったからこそ勇敢になれたのかもしれないとか、政権を疑問に思いつつも疑心暗鬼で何も言えない世の中というのはやはり不健全で怖いなあとか。

今の現代の視点からこの時代の法廷場面を見ると、「死刑」が決まっていて、裁く人も弁護する人も「自分の敵」という「恐怖法廷」は信じられないけど、その時代の中では正統だったのだろう。そういうふうに考えると、現代で正統とされている価値観も後世では変わってしまうのかもしれない・・・。

こういう「宿題映画」は、数年前にみたダンサーインザダークを見て以来、あまり見ないようにしていたのです。ただでさえストレスフルな日常なのに、さらに余暇にまで重たい気持ちを溜め込んでしまうので。なのに、また観てしまいました・・・。

で、「ダンサーインザダーク」でも、偏った裁判の後、最後は死刑場面(絞首刑)だったけど、「白バラの祈り」では、斬首刑でした・・・。
マリーアントワネット時代のそれは、もっと上から刃が重力で落ちるタイプだったと思うのですけど、白バラメンバーのは、机の上に腹ばいになって首をセットして、上から大きな菜切り包丁みたいなものを垂直に降ろして人が上から押さえてる・・・と言ったタイプの感じでした・・・。
残酷場面はブラックアウトして、音だけでしたけど、ゾフィー → 兄 → 仲間 という順で次々と刑が執行されていたので、「落ちた首を兄は見たのか?」とか、映画の終了後に話しているご夫婦がいらっしゃいました・・・(残酷物語・・・)。
斬首刑は、執行官もいやだろうなあ・・・。

で、「尋問官とゾフィーとの心理的戦い」というのがパンフレットでは、この映画のみどころと書いてあったのですが、例のごとく本質とはちょっと外れたところばっかり観ておりました・・・。
意外だったのは、
①戦時下とはいえ、ドイツの人たちの生活(食生活や身なり)が、赤貧状態ではなかったこと。日本の戦争時代の映画を見ると、みんなボロを着て、髪の毛も洗ってなくて、サツマイモのツルを食べているような人民像だけど、ドイツの人たちは仕立てのいいジャケットなんかを着ていたりする。

②49日かける裁判が1日で終わったり、99日ある死刑執行までの猶予が全くないなど、恐怖政治下の法廷裁判はすごく偏っているけど、法的手続きは順に踏まれていたこと。ちゃんと取り調べしたり、尋問したりとか、自供書にサインをするとか、国選弁護人がつくとか・・・。見つかったら即銃殺とか、反論の余地なしで切り捨て御免とか、自白するまで鞭打ちにするといったイメージだったので、想像(日本の戦時中)よりもとっても民主的でちょっと意外でした(法秩序に則っているようにみえるからこそインテリ層をも巻き込めたのかも・・・)。

この映画自体、戦後50年間東ドイツに隠されていた克明な記録を元に脚本家されたそうで、克明な記録を残しているあたりがとっても意外(犯人が犯行記録を詳細に残しているみたい・・・日本では都合の悪いものは書かないとか、捏造したりとか、記録さえ執らないのでは?)。

③戦時下で女性が働いていたこと(秘書とか拘置所の見張りとか)。さすがドイツ。

上映会ということで、素人が操作しているからなのか、映像が途切れるというハプニングが何回もあったり、隣りに途中から入ってきて座ったクラブのママ風のおばちゃんのマナーが悪くてイライラ・・・などの雑事感情はさておき、現実はフィクションよりもドラマチックと言いますか、歴史の重さを感じた映画でした。

欲を言えば、ヒットラー政権崩壊後に、ゲシュタポの裁判官や尋問官がどのように裁かれたのか、その後を映画の中で語って欲しかったです(悪人が懲らしめられたって知れば鑑賞後の気分が幾分救われよう・・・というもの)。

恐怖政治は恐ろしいなぁ・・・